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コラム

人も、社会も変えていく「グリーンジョブ」とは? -定義と歴史-

<記事掲載日:2021年8月31日>

グリーンジョブとは

グリーンジョブは、環境に有益な商品・サービスの提供、また企業において環境に配慮した持続可能な生産プロセスに貢献できる仕事をあらわすものとして、国際労働機関(ILO)が2007年に公表しました。国際連合環境計画(UNEP)においても、コロナ禍で失業者が増える中、より良い復興の為には、2030アジェンダやパリ協定に向け経済を推進するグリーンジョブの創出が有効であると述べられています。

UNEPを含む、グリーンジョブについての議論は、ILOが発表しているグリーンジョブの定義に基づいており、以下のように定めています。


ディーセントワークの要件を満たし、以下のいずれかに係る事業を展開する、環境保全・環境維持に貢献する仕事

  • エネルギー使用と原材料使用の効率改善
  • GHG排出量の制限
  • 技術、教育、キャリアに係る、グリーンジョブ就労に向けた道筋について
  • ごみの排出量削減、汚染物質排出の削減
  • 生態系の保全と回復
  • 気候変動への適応支援

ここで述べられるディーセントワークとは、下記の要件を備えています。

  • 生産性があり、十分な収入を得られる
  • 職場の安全管理と、就業者とその家族の社会生活が保障される
  • 個人の成長が見通せて、社会的統合を促す
  • 就業者が勤務における懸念事項を伝え、人生に係る社内決定に参加・整理する自由がある
  • 全就業者に平等な機会、平等な扱いを保証している

グリーンジョブという言葉を見ると、自然環境の保全や環境活動に関わる仕事というイメージを抱かれるかもしれません。しかしグリーンジョブは業務の種類だけを指すのではなく、ディーセントワーク(適正な就業環境)も兼ね備えている必要があります。 環境保全や気候変動対策における適応ビジネスや緩和ビジネスを直接的に展開するコンサルティング会社や再生可能エネルギー関係の企業だけに関わるのではなく、あらゆる企業が関わっていくものです。また、会社の規模も関係ありません。CSR活動など、資金面でも人材面でもゆとりのある大手企業が対応するものではなく、小さな企業であっても、実現可能な小さな取り組みから初めて、徐々にチャレンジングでより貢献性の高い取り組みへ、推進していくことができます。さらに、グリーンジョブは国の経済発達レベルに関係なく、世界各国で生み出すことができます。都市でも農村地域でも推進でき、あらゆる部門、業種、企業の種類で推進することが可能です。仕事の環境的・社会的な質を向上させることは、国家レベルで持続可能な発達目標の達成を目指すために必要な継続的なプロセスなのです。このグリーンジョブの概念は、世界各国の政府・雇用主・就業者から提唱される、国際的な課題になってきています。持続可能な開発を達成に焦点を当てると、あらゆる持続可能性の視点、特にSDGsの成功にはグリーンジョブの課題への対応、そして拡大が必要不可欠です。

ILOにおけるグリーンジョブの歴史

環境活動と就業環境の双方を重視する考えは、古くは30年以上前の米国の失業対策から存在していたと言われています。当時は開発に対する自然環境保全を促進する林業の雇用機会提供だったそうですが、最近では特にグリーンリカバリーが叫ばれ、世界各国の政府、雇用主や従業員にも着目される、国際的な課題として捉えられています。ILOにおいては、2007年に当時の局長が発表したレポート中で公開され、以降、持続可能な社会や低炭素・脱炭素社会の実現に則して活動を広げてきました。


この流れを受け、現在のILOグリーンジョブプログラムでは、グリーンジョブに関するガイドラインを作成、これを広く提唱するとともに、ステークホルダー向けにグリーンジョブ導入を支援・評価・推進することで事例検討を進め、より効果的な戦略を策定し共有することで、世界的なグリーンジョブ創出を推進しています。

持続可能な開発が進む中、火力発電や石炭資源を主要ビジネスとしている事業者など、特定の事業領域は縮小傾向にあり、その従事者は将来的な失業リスクが高まっています。また、コロナ禍でも失業者が世界的に増加しています。このような社会情勢の中で、長期的に必要とされるグリーンジョブの創出は、グリーンリカバリーの観点からも注目されており、今後もこの取り組みが加速していくでしょう。


記事掲載日:2021年8月31日

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